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ツアー報告(アントレ2005年12月号掲載分)

以下は、古楽情報誌「アントレ」2005年12月号に掲載された文章の一部です。
(一部追加個所などもあります。)
7月のツアーはすでにブログで報告してありますので、10月分をどうぞ!

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リクレアツィオン・ダルカディア 2005年 イタリア&スロヴェニア・ツアー報告

10月のコンサート・ツアーは8日間で計7回という少々ハードなスケジュール。
10月15日 ボローニャ Sala Filarmonica
10月16日 ボッティチーノ (ブレシア)  Teatro Lucia
10月18日 トレント Trento Sala Grande Castello del Buonconsiglio
10月19日 ロヴェレート Sala Filarmonica
10月20日 モデナ Teatro San Carlo
10月21日 ローマ auditorium Istituto Italiano di Cultura
10月22日 チェント(フェラーラ) foyer Teatro Borgatti

 ボローニャではコレッリやモーツァルト、ワーグナーらが名誉会員であることでも知られる、歴史あるアカデミア・フィラルモニカのコンサート・シリーズでの演奏会。事務室にはコレッリから指揮者ムーティに至るまでの名誉会員達の肖像がずらりと並んでいて壮観でした。会場は品のある赤色の背椅子が印象に残るホールで、古楽を演奏するには響きが少々足りないと思われるものの、その不足が音楽の妨げにならないという不思議な場所でした。会員制のコンサート・シリーズであるせいか聴衆の年齢層が非常に高く、落ち着いた雰囲気の演奏会となりました。

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 この写真はボローニャ・アカデミア・フィラルモニカの名誉会員リスト。
 コレッリ、モーツァルト、ワーグナー、最近ではアバド、ムーティの名も見えます。

 16日はブレシア古楽祭での演奏。会場はブレシア駅から車で15分ほどのボッティチーノという静かな町の近代的な劇場でした。響きが非常に少ない会場のため少々心配したものの、演奏後の聴衆の反応は思いのほか良く、私達もほっと胸をなでおろしたのでした。満員御礼とまではいかなかったものの、聴衆の中にはオルガニストR.ギエルミの顔があったり、ブレシアのコンセルヴァトーリオのチェロ教授がいたりと、うっかり気を抜けないものです。
 17日は16世紀の公会議で知られる町トレントへ。ツアー中唯一の休日を得ていた私達は町を散歩していたところ、その町の音楽学校ボンポルティ音楽院を偶然にも発見。これもボンポルティコンクールで優勝した縁と思い音楽院に入ってみたところ、次の日19日はなんとメンバー松永綾子の師匠でもあるS.モンタナーリ(伊古楽グループ「アカデミア・ビザンティーナ」やC.ルセの「レ・タランリリク」のコンサート・マスターとして活躍するヴァイオリニスト)のマスタークラス。これは千載一遇のチャンス、と次の日4人は飛び入りでマスタークラスを受講してしまったという楽しいハプニングもありました。
 話は戻り、18日トレントの演奏会場はその町の中心にある大きな古城。大理石の床と美しい絵画が壁に描かれている空間は響きも良かったのですが、歴史的建造物にはよくある空調の不備のため、凍えるほどに寒い。まだ10月とは言え、イタリアの北に位置するトレントの夜はすでに冬なのです。しかし会場は満員の盛況、寒さを吹き飛ばしながらの演奏会でした。
 19日はコンクールの舞台ともなったロヴェレートでのコンサート。トレントの南に位置するロヴェレートは、モーツァルトが初めてのイタリア旅行でも訪れ、ゲーテが「ドイツ語とイタリア語の境目である」と語った、小さいけれど多くの歴史を抱えた町でもあります。故郷に戻ったような感覚をもってほぼ一年ぶりに訪れるコンサート会場へ。そこは絹のような柔らかい響きをもった私達の大好きなホールで、そこで演奏することは何にも勝る私達の喜びでした。客席には去年のコンクールのときに知り合った顔もちらほらと見え、まさに故郷に温かく迎え入れられたような雰囲気のコンサートとなりました。新聞へ出ていた予告記事も、その見出しは「ダルカディアが帰ってきた!」。
 20日は少々南へ下り、モデナへ。モデナ音楽祭のラインナップは非常に充実したもので、レオンハルト、ヴェネクシアーナ、E.オノフリ、S.センペなどの第一線の音楽家達が毎週のようにやってきていました。会場は劇場ということで訪れるまでは響きを心配していましたが、それは幸いなことに杞憂に終わり、非常に美しい外観と良い響きをもった素晴らしい空間でした。客席は1つも空きがない満員、舞台上両端に座っている子供達は熱心に音楽に耳を傾けており、私達も集中度の高い演奏ができたと思います。
 次の日21日は列車での大移動を経て、ローマへ。ローマでの演奏会場は日本文化会館のホール。日本人スタッフに迎えられ、障子戸のある楽屋にいるとここは日本?と一瞬錯覚するほど。そうしたおかげもあってか、私達もリラックスして演奏を楽しむことができたように思います。コンサートでは主催者側の要望により、アンコールに「小さな秋(新垣隆編曲)」を演奏。聴衆は日本文化会館主催イベントの常連客に加え、私達の評判を聞いてやってきた方も何人かいらしたようでした。
 そしてとうとうツアーの最後、22日はフェラーラとボローニャの間に位置するチェントの劇場へ。会場は劇場そのものではなく、建物の中にある落ち着いた雰囲気の一室。用意した客席はあっという間に一杯になり、部屋側面の戸を全部開け放して、部屋を取り囲むように椅子を並べてようやく全員が着席できた、というハプニングもありましたが、そうした親密な空間の中で、ツアー最後を飾る良いコンサートができたのは本当に幸せなことでした。
 以上が今回のツアーの簡単な報告となります。想像以上に多くの人が私達の演奏を聴きにやってきて、そして多くの人が私達の音楽に喜びを感じてくれたことは、今後もよりよい音楽を生み出していこうという大きなエネルギーを私達に与えてくれました。ツアー前に私達の演奏を聴いて多くのアイディアをくださったマリー・レオンハルト、そしてこのツアーのために懸命に仕事をしてくれたマネージャーのフランチェスカ・バローニに感謝しつつ、筆を置くことにします。
 
by ricrearcadia | 2006-01-23 23:45 | ツアー報告

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